昨日は、日本翻訳連盟(JTF)翻訳支援ツール説明会で登壇させていただきました。
お越しいただきました皆様、ありがとうございました。
今回は、翻訳の品質管理ツールである「色deチェック」の開発のお話を交えつつ、どのような視点でツールと付き合えばいいのか私の考えをご紹介しました。
ツールの良し悪しは目的により異なる
これはすごく基本なのですが、忘れてしまいがちですね。
仲間の翻訳者から仕入れた情報をそのまま鵜呑みにしてませんか?
このツールはいい。このツールは悪い。
私は基本的に、自分で試すまでは「悪い」という判断はしないように心掛けています。可能性を狭めてしまいますよね。
「よい」も「わるい」も、その人がどのような仕事をしているのか、で大きく異なります。
翻訳分野、翻訳言語、支援対象となる工程、フリーランスOR会社員、、、、、。
ツールの噂話を聞いたときには、私は必ず上記のことは聞いています。そうすると、相手の言っていることが自分の翻訳に対して当てはまるのか、そして自分が試す価値があるツールなのか、まず最初の段階で判断できると思います。
誰が言っているの?
誰が言っているのか。これ案外重要です。
セミナーで例に挙げたのは、ギターのエフェクター(音色を変える装置)の良し悪しの投稿サイトの例でした。
私がかつてよく読んでいた海外のサイトの項目を思い出して、たとえ話をしました。
エフェクターにはいろんなものがあるので細かく書きませんが、あるエフェクターの評価用の掲示板があります。
その掲示板には、世界中の人が投稿していて、意見交換をしているわけです。
ただ、投稿者は自由に意見を言えるのではなく、特定のフォーマットで投稿しなければなりません。
そのフォーマットが素晴らしいと思っています。私、翻訳ツールについても、こういうフォーマットでみんなで評価をすれば、もっとわかりやすいデータが蓄積されるのになーって思っています。
こんな感じ。
で、これ全部説明すると大変なので省きますが、その意見を述べている人のバックグラウンドがわかると、その評価項目のコメントや点数をどう受け取ればいいのか判断できます。
ギターを演奏している年数と演奏分野。これ大切です。
プロとしてライブ活動をしているのか、アマチュアとして個人で自宅で演奏しているのか。
どの視点からの意見なのか、これがわかると、評価項目の意味がより理解できますね。
翻訳ツールも同じだと思っています。どんな人が言っている意見なのかそこまで耳を傾けるといろんなヒントが得られます。
開発では、要望の背景を伺って優先順位を決定
私のツールの試用版を使う方々からいろんなご意見をいただいてきました。
私はそういうご意見がすごくありがたくて、開発に生かしてきました。今も毎月説明会を無料で開催していますが、ユーザーの方々の生の声を聞ける貴重な機会だと思っているので続けています。
処理スピードの遅さは私も感じていたので、「遅い」といわれるたびに改良を重ねました。
また、チェック項目についても、「こういうことできませんか?」というご意見に対しては、チャレンジだと思って対応してきました。
開発するときには、要望をいただいた方の翻訳手法や翻訳分野などを伺った上で、多くの人が喜びそうだと思われるものを優先しています。
要望の背景を伺うことで、私の翻訳者としての視点が豊かになります。
緻密なチェックの方法や分野特有の考え方を伺ことができるのです。ノウハウをいただいているんですね。
ツールはカスタマイズして使う
こんな感じで開発してきたので、機能がたくさんあります。私が機械分野の特許翻訳では使わない機能もついています。
そのため、デフォルト設定は「万人にとって大丈夫」なセッティングになっています。
ところが、この「万人にとって大丈夫」は、「個人にとっては物足りない」なんです。
特許翻訳という1つの分野の中でも、様々な分野があり評価方法は異なるのに、法務やIT、医薬・医療などの別分野になったらもっと項目が異なります。
すべてに共通するうれしさでまとめたら、中央の黄色の部分だけ。うれしさって少ないのです。
だから、ツールをカスタマイズして自分の好みに変える必要があります。私だったら、ツールの設定を変えて、以下のようにうれしさを移動させます。
これがカスタマイズです。私が使っている色deチェックの設定は、法務翻訳者にとってはうれしくない可能性が高いです。でも、私の翻訳チェックには役に立ちます。カスタマイズをするとそうなってきます。
Wordもそうですね。デフォルトの設定で使うのではなく、いろんな設定を変更して翻訳に使いやすくカスタマイズすることが重要だと思います。
目的に合ったツールを複数使う
万能ツールはありません。
ツールの1機能だけでも仕事の役に立ったらそれで十分ではないでしょうか。
「色deチェック」の機能をすべて使うことはできないと思います。私も使っていません(笑)。
そんな視点でお試しください。
また、自分がやりたいことがツールを通じて本当にできないかどうか、開発者に問い合わせるのもいいと思います。私はそんなご連絡待ってます。
無料説明会でカスタマイズの方法をご紹介しています
ツールは60日間無料でご試用いただけます。
ご自身の手で動かしてみて、お試しください。
無料説明会では色deチェックの設定方法についてご紹介をしています。
例えば対訳表の作り方は、原稿の性質により異なります。
最新版(未公開版:セミナー参加者にご案内します)では、Wordの見出しをもとに原文と訳文を対応づける手法を取入れています。
チェック項目も分野により異なりますね。
そのような設定方法もご紹介します。
お時間のある方はぜひお越しください。