GreenTでは、[T1]タブ、[T2]タブ、[T3]タブを使うと、Google Cloud Translation API のTranslation API - Basic を利用した訳文を出力できます。ただし、そのままでは利用しづらいことがあるため、出力される訳文を必要に応じて修正しています。また、2種類の方法を用いて用語集を適用しています。
Ver. 1.3以降では、それまでの4種類の訳文を上回る6種類の訳文を出力できるようになっています。以下、それぞれの違いを説明します。
Ver. 1.7(2021年8月公開)以降、[T1][T2][T3]タブを[Google]に統一しました。 用語集を適用する際には、[T2]のアルゴリズムで翻訳をします。 また、SMT(ルールベース機械翻訳)機能を廃止しました。 なお、以下の設定で[T1][T2][T3]タブの表示に戻せます。
概要
上記のように、翻訳用のタブを切り替えることで翻訳エンジンの切り替えをします。
[T1]タブと[T2]タブでは用語集の適用ルールが異なるため、訳文の出力が変わる場合があります。傾向として、[T1]タブでは自然な訳文が出力されることを重視し、[T2]タブでは用語の適用を重視します。
また、それぞれのタブではラジオボタンでニューラル機械翻訳(NMT)と統計機械翻訳(SMT)を切り替えます。好みに応じて使い分けてください。
いずれの場合でも、GreenTのオプション設定により文末処理や分野の指定をした場合には、適宜修正がされます。
(参考:翻訳対象に応じた設定方法)
特徴
[T1]タブ:用語集の適用1
用語集を緩やかに適用して、できるだけGoogle翻訳の能力を活用していますので自然な訳文が出力されます。その代償として、用語集が微妙に変化しているなど、正確に適用されない場合があります。
[T2]タブ:用語集の適用2
[T2]タブでは用語集を適用することを重視します。文構造がシンプルにな場合には、出力される訳文が[T1]タブよりも自然な表現になることがあります(下記の「出力例2:日英特許翻訳」を参照)。訳語を無理やり当てはめるので係り受けが不自然な訳文が出力されることがあります。
[T3]タブ:用語集の適用なし
用語集を適用しません。Google翻訳の能力をそのまま訳文に反映させます。[T1]タブや[T2]タブのように無理やり用語集を適用しないため、構文がきれいに反映されます。
特許翻訳のように訳語の統一を厳密にする必要がない場合や、専門用語や造語がない文章を訳す場合には、[T3]タブが使いやすいかもしれません。
出力例1:英日特許翻訳 2020年5月7日
比較的シンプルな文章で用語を2つ適用させる例です。登録する用語により適用結果が異なりますので、出力例の1つとしてご覧ください。
今回の例では、大きな誤訳を含まない訳文が出力されますので、目指す構文に近い出力文を利用すればよいと思います。
[Style]タブにて、特許明細書のスタイルを適用し、文末表現を常体にしています。
原文
The output devices 114 may, for example, be placed above the input devices 112 so that they can be accessed when the user is manipulating the input devices 112.
用語集
| 原語 | 訳語 |
| input device | 入力装置 |
| output device | 出力装置 |
[T1]タブ(NMT)
| 出力装置114は、例えば、ユーザが入力装置112を操作しているときにそれらにアクセスできるように、入力装置112の上に配置できる。 |
用語が適用され、数字も正しく訳出されています。
[T1]タブ(SMT)
| 出力装置114は、例えば、ユーザが入力装置112を操作しているときにアクセスできるように入力装置112の上方に配置されてもよい。 |
用語が適用されています。数字も正しく訳出されています。
[T2]タブ(NMT)
| 出力装置114は、例えば、入力装置112の上に配置され、ユーザが入力装置112を操作しているときにアクセスできるようになっている。 |
[T1]タブとは異なる構文になりました。用語が適用されています。数字も正しく訳出されています。
[T2]タブ(SMT)
| 出力装置114は、例えば、ユーザが入力装置112を操作しているときにアクセスできるように入力装置112の上方に配置されてもよい。 |
[T1]タブと全く同じ文になりました。用語が適用されています。数字も正しく訳出されています。
[T3]タブ(NMT)
| 出力デバイス114は、例えば、ユーザが入力デバイス112を操作しているときにそれらにアクセスできるように、入力デバイス112の上に配置されてもよい。 |
用語が適用されていません。数字は正確に訳出されています。
[T3]タブ(SMT)
| ユーザが入力装置112を操作しているときにアクセスできるように、出力装置114は、例えば、入力装置112の上方に配置されてもよい。 |
[T1]タブと[T2]タブとは異なる構文になりました。用語が適用されています。数字も正しく訳出されています。
出力例2:日英特許翻訳 2020年5月7日
[T2]タブのNMTで、もっとも使いやすい訳文が出力された例です。訳しづらい文章を選びました。出力に差があることを伝えることを目的にしていますので、出力文の分析に力を入れる必要はありません。
なお、原文を意味で区切り翻訳する方法で紹介した方法を使えば、さらに別の訳文も出力できます。
原文
遷移金属触媒として、クロロ[[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾール-2-イリデン](アセトアニリド)パラジウム(II)]を用いる請求項1~8のいずれか1項に記載の多環式化合物の製造方法。
用語集
| 原語 | 訳語 |
| クロロ[[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾール-2-イリデン](アセトアニリド)パラジウム(II)] | Chloro[[1,3-bis(2,6-diisopropylphenyl)imidazol-2-ylidene](acetanilide)palladium(II)](東京化成工業株式会社サイトより) |
(原文を意味で区切り翻訳する方法の例文と用語集を利用)
[T1]タブ(NMT)
| 9. The transition metal catalyst according to claim 1, wherein Chloro [[1,3-bis (2,6-diisopropylphenyl) imidazol-2-ylidene] (acetanilide) palladium (II)] is used as the transition metal catalyst. A method for producing a cyclic compound. |
化合物名に半角スペースが挿入されてしまっています。数字のミスも発生していますし、文も2文に分割されてます。
[T1]タブ(SMT)
| As a transition metal catalyst, Chloro [[1,3-bis (2,6-diisopropylphenyl) imidazol-2-ylidene] (acetanilide) palladium (II)] multi according to any one of claims 1 to 8 using method for producing a cyclic compound. |
化合物名に半角スペースが挿入されてしまっています。数字のミスはありませんが、特許クレームで用いられる構文からかけ離れています。
[T2]タブ(NMT)
| 9. The method for producing a polycyclic compound according to claim 1, wherein the Chloro[[1,3-bis(2,6-diisopropylphenyl)imidazol-2-ylidene](acetanilide)palladium(II)] is used as the transition metal catalyst. |
数字は相変わらず間違っていますが、用語が正確に適用され、かつ特許クレームの構文が表現されています。右下の数字チェック欄を参考にすれば数字のミスは拾いやすいので、この出力が一番修正しやすい結果となりました。
[T2]タブ(SMT)
| Method for producing a transition metal catalyst, polycyclic compound according to any one of claims 1 to 8 using the Chloro[[1,3-bis(2,6-diisopropylphenyl)imidazol-2-ylidene](acetanilide)palladium(II)]. |
用語集が適用され、数字も正確に訳していますが、特許クレームとして意味をなさない文になっています。
[T3]タブ(NMT)
| The chloro [[1,3-bis (2,6-diisopropylphenyl) imidazole-2-ylidene] (acetanilide) palladium (II)] is used as the transition metal catalyst, according to any one of claims 1 to 8. A method for producing a polycyclic compound. |
数字は正しいのですが、用語に間違いがあります。また、特許クレーム文として意味をなしていません。
[T3]タブ(SMT)
| As a transition metal catalyst, chloro [[1,3-bis (2,6-diisopropylphenyl) imidazol-2-ylidene] (acetanilide) palladium (II)] and according to any one of claims 1 to 8 for use method for producing a polycyclic compound. |
用語の間違いがありますが、数字は正しく出力されました。しかし意味不明な訳文です。
使い分けの方法
私は一般的に、用語集の適用箇所が少ない場合には、[T1]タブのNMTが出力結果がよく、用語集の適用箇所が多い場合には、[T2]タブのNMTが使いやすいと感じています。Ver. 1.3で[T2]タブの用語適用ルールを改良したので、[T2]タブのNMTの出力文も比較的使いやすくなったと思います。
用語集の適用箇所が多い場合には用語集を適用すると出力文が崩壊することもあるので、むしろ[T3]タブのNMTの出力を修正するほうが作業工数が減ることもあります。もしくは、[T0]タブで用語だけを置換してあとは手翻訳にする方がいいでしょう。
SMTを利用する場合には、[T3]タブにして用語集を適用しないほうが出力結果がよくなることが多いと思います。
実際に翻訳する際には、この6つの訳文を全部出力して比較する時間はありません。よく使う手法を2つくらい決めておいて、それらの比較だけでよいと思います。比較の際には、ぜひ[比較]ボタンをご利用ください。
(参考:異なるエンジンの訳文を比較する方法)
翻訳の言語方向や分野、適用する用語の数や用語の長さ、用語の種類により異なるので、結局のところケースバイケースということになりますので、上記は1つの基準としてみてください。

















